人類とダイヤモンドのつきあいは長く、古くは紀元1世紀、ローマの歴史書「プリニウスの博物誌」に登場します。そこには硬質な物質を表す「アダマス」という名前で記述され、由来はギリシャ語のαδάμας(adámas 征服し得ない、屈しない)からといわれています。
遠い異国の地インドからもたらされる謎の硬い鉱石。カット技術がない当時は宝飾品としてよりも彫刻の道具として使用されたり、原石のまま魔除けやお守りとして男性が身に着けることが多かったようです。古代ローマ時代の軍人のお守りとして戦場を駆け巡っていたのでしょうか?
その後カット技術の進歩によって宝飾品としての価値を高めていくダイヤモンド。15世紀頃には微小なダイヤモンドの粉で大きなダイヤモンドを磨くという手法が確立されます。まだ鉱山が発見されていなかったその頃は採集量が非常に少なく高品質のダイヤモンドを身に着けるのは王侯貴族の専有特権でした。
ダイヤモンドの歴史が大きく変わるのは19世紀
南アフリカの少年がオレンジ川で21.25カラット(4.25g)のダイヤモンドの原石を拾います。南アフリカでダイヤモンドが採集できると分かると数千人の探鉱者が押し寄せることになります。そしてついに歴史上最初のダイヤモンド鉱山「キンバリー鉱山」が発見されました。
鉱山の発見によりダイヤモンドの学術的な研究と宝飾品としてのカット技術が発展することになります。そして20世紀初頭にダイヤモンドの輝きを最もよく引き出す「ラウンドブリリアントカット」が考案されました。現代の婚約指輪で用いられるダイヤモンドはこのラウンドブリリアントカットが多くを占めます。
かつては原石のまま魔除けやお守りとして身に着けられたダイヤモンドはこのような歴史を経ていま私たちが身に着ける宝飾品としてのダイヤモンドとなりました。
薬指に輝く美しいダイヤの婚約指輪を見つめるとき、こんな歴史に思いを馳せるのも楽しいかもしれませんね。